
こちらも久しぶりで遭遇。 ぼくが会釈をすると追いかけてきて話が始まった。 話はいつも弟の事だった。
弟は家ではあまり学校の事を喋らなかったんだっけ? S夫人は言った。 「男子は違うでしょうけれど、家の娘はいつも 学校の話をしてくれていたんですよ。 だから弟さんの事もよく知ってます」
弟が家では話をしなかったというのは 間違いかもしれない。 現にぼくは弟の同級生だった男子の名前はちらほら 聞いた事があるし、女子の名前も数名知っている。 その中に彼女の名前もあった。
ぼくは当時は絵を描くのが好きだったので 弟の友だちたちを題材にして漫画を描いた物だ。 森下くんは、今から思うと「アダムス・ファミリー」の 毛だらけの人にそっくりだった。 顔も身体も毛に覆われていた。
Oさんという女子を弟の恋人に見立てて可愛く描いた。 また父親が画家というTさんも実際可愛かったのだが 可愛く描いたものだ。
S夫人に関しては家に買い物に来てくれたので 名前が出た。 彼女は料理も何も知らない人で、よくぼくの 祖母や祖父に色々と聞いたそうである。 父母に関しては何も言われなかったが 祖父母に関しては良い事ばかり言われた。 悪い気はしなかったが恥ずかしかった。
弟の写真は殆ど捨てて来てしまった。 その捨てられた写真の中に彼女たちの姿も 映っている。 写真というのはやはり大切なものだ。
画像: 水天宮の河童
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